建設ロボット研究連絡協議会ホームページ

会長挨拶

ご挨拶
建設ロボット研究連絡協議会会長
湘南工科大学 教授 井上文宏

湘南工科大学 教授 井上文宏

1980年代,いわゆるバブル期に深刻化した人件費の高騰から,建設会社を中心に建設ロボット開発が積極的に進められました.建設業界をあげて,建設ロボットの開発に邁進していました.しかし,1990年代に入りバブル経済がはじけると,建設業界も余力を失い,また,人手不足も影を潜めたために日本における建設ロボット開発の波は潮が引くように一斉に小さくなっていきました.以来,建設ロボット開発は,災害対応や維持管理工事などで狭隘や危険を理由に人が立ち入ることができない工事での使用に限定されつつも,引き続き現場ベースで続けられてきました.その成果は,2011年3月11日に起こった東日本大震災において被災した原子力発電所関係の工事で有効に使われたことで認識されました.

このような中,建設分野ではより積極的にロボットを導入しようという機運が再び熱を帯びつつあります.これは,2007年以降の日本の人口減少とともに生産年齢人口の急激な減少が懸念されることを背景に,低迷してきた建設分野の生産性向上に取り組もうとする国の方針に根ざしたものです.今後,益々深刻化する担い手不足,根絶することのできない建設災害・事故,老朽化が進行する構造物の維持更新,激化する自然災害など,建設業界を取り巻く情勢は年々厳しい状況になっています.建設業界が社会に対して将来にわたり人々の生活を支える社会基盤を安定的に提供するには,これまでの延長線上の議論では,対応できなくなることは明らかです.その意味から,建設ロボットの開発と導入は,極めて重要な意義を有すると考えています.

建設ロボット研究連絡協議会(Council for Construction Robot Research (CCRR))は,土木,建築,ロボット分野の研究者,技術者が一堂に会し,建設ロボット技術の発展と普及を促進する場を提供すべく,公益社団法人土木学会,一般社団法人建築学会,一般社団法人日本ロボット学会,一般財団法人先端建設技術センター,一般社団法人日本建設機械施工協会,一般社団法人日本ロボット工業会が協働して運営する組織です.ここでは,建設ロボットシンポジウムを開催し,建設分野におけるロボット技術の開発と普及に関わる研究と技術交流を行うと共に,学協会の情報を共有することにより,分野を超えた連携を進めています.

さらに,協議会は,国際建設ロボット学会(International Association for Automation and Robotics in Construction, IAARC)と連携し,建設ロボット分野の国際的な活動の窓口にもなっています.IAARCでは, 1984 年以降,ヨーロッパ地域,アジア地域,アメリカ地域の各地域を順に回る形で国際建設ロボットシンポジウムを開催しています.日本でもこれまでに第 5 回(1988 年),第 9 回(1992 年),第 13 回 (1996 年),第 23 回(2006 年)と4回開催されていますが, 2007年以降は開催さることがなく,海外から日本での開催要望の声が出されていました.このような状況を受けて,建設ロボット研究連絡協議会は,2020年に北九州国際会議場において第37回国際建設ロボットシンポジウムを開催する予定でしたが,2019年 12 月に発生した新型コロナウィルス感染症の影響を受け,2020年10月27日(火)~28日(水)にオンラインでの第37回国際建設ロボットシンポジウムを開催しました.オンラインでの国際建設ロボットシンポジウムは初めての経験でしたが,221件もの論文投稿と関係各位の多大なご尽力により成功裡に終えることができました.36 年間続いてきた建設ロボット開発の流れを途絶えさせることなく,後世につなぐことができたことは大きな意義を持っていると感じています.

いま,AI,IoT,ICT,自動化技術を初めとして,様々な先端技術が建設分野に導入されつつあります.四半世紀を経て再び盛り上がりつつある建設ロボット開発の機運を消すことなく,さらに勢いづけるべく,建設ロボット研究連絡協議会では建設ロボットの普及とさらなる発展に尽力していきます.皆様のご支援,ご協力を宜しく御願いいたします.


2021年7月

概要

1988年6月6日(月)~8日(水)の3日間,東京・京王プラザホテルに於いて,(社)土木学会,(社)日本建築学会,(社)日本ロボット学会,(社)日本ロボット工業会の建設ロボット関連4団体の共同主催により通商産業省並びに建設省の後援のもと,第5回国際建設ロボットシンポジウム(5th ISRC)(運営委員長:石川六郎・(社)土木学会会長,(社)日本建設業団体連合会会長,日本商工会議所会頭)が我が国で初めて開催され,約500名の参加者を得て成功裡に終了しました.1988年7月28日(木)の同シンポジウム運営委員会において,石川六郎運営委員長の提案により,今後の建設ロボットにおける国際建設ロボットシンポジウムの開催準備,並びに国内における建設ロボットの研究開発の促進,国際研究協力の推進等を目的として,(社)日本ロボット工業会を事務局に,(社)土木学会,(社)日本建築学会,(社)日本ロボット学会,(社)日本ロボット工業会が中心になり,4団体所属の委員構成により本建設ロボット研究連絡協議会(CCRR:Council for Construction Robot Research)が設置されました.その後,1990年に第1回建設ロボットシンポジウム(1st SCR)が開催され,(財)先端建設技術センターが主催に加わり,また第2回建設ロボットシンポジウムで(社)日本建設機械化協会が加わり,現在の6団体による本協議会の体制ができ上がりました.協議会では,当初,隔年毎に建設ロボットシンポジウムと建設ロボットフォーラムを交互に開催してきましたが,近年は,参加される皆様の強い要望を受け,建設ロボットシンポジウムを毎年開催しています.